心理療法の1つに精神分析療法よりも古い時代に考案され、現在に至るまで長い歴史を持つ催眠療法というものがあります。
しかし、テレビ番組などで「催眠」をおもしろおかしく放送しているため何か怪しいものという印象を持っている方も多くいますが、決してそのようなものではありません。
催眠とは何か
人がリラックした状態で目を閉じていると日常生活での意識下で感じる状態とは違った感覚に入り込む場合がありますが、このような状態を催眠性トランスと言います。
催眠状態になると、睡眠に似たような感覚に陥り体は重くなりますが、外部からの人の声や物音などは聞こえるので、催眠者の暗示に誘導されやすくなります。
催眠療法では、クライエントが抱えている心の問題をこのような催眠状態を利用して解決していくことが目的です。また催眠状態に陥ると、次のような状態になることがあります。
- 自分の意識に反して身体が暗示通り動く。
例えば、カウンセラーが「腕が石のように重くなり上がらなくなる」という言葉で暗示誘導すると、自分では意識しているつもりがないのに、本当に腕が上がらなくなりますが、これは暗示により無意識のうちにそのような状態に腕を動かしているためです。 - 日常生活では自分で思い浮かべることもないようなイメージが湧き上がってくる。
例えば、カウンセラーが「前世」という言葉で暗示誘導すると、その言葉に関連する思いもよらないイメージが次々と頭に思い浮かんでくる場合があります。 - 日常で感じる時間の観念とは違った感覚で時間が進んでいく。
- 暗示の内容は既に忘れてしまい全く記憶がないのに、催眠修了後も暗示された言葉通りに動いてしまう。
以上のような催眠状態下では、潜在意識(無意識)が直接外部刺激に反応し、現実を意識できる顕在意識の感覚が鈍くなっているからです。
人は通常、意識的に日常生活を送っているので、催眠状態には異質なイメージを抱きますが、意識下の領域で物事を認識し行動しているか、無意識下の領域で気づかずに行動しているかの違いにすぎないので、過大評価すべきではありません。
また、有効な催眠の結果を得るには、催眠者と被催眠者が互いに信頼関係を築いていることが重要な要素になるので安易に行うべきではありません。
催眠療法とは何か
催眠状態になればクライエントの顕在意識が弱くなり、暗示の効力が高まります。
催眠療法とは、この催眠状態で暗示の力を利用してクライエントが抱える心の問題や障害を解決するものです。
クライエントは催眠状態になることで、カウンセラーの暗示に込めたメッセージを抵抗感を持たずに、ストレートに受け入れることができるようになり、カウンセラーは、クライエントが持つ否定的な固定観念や思い込みなどを解除することが可能になります。
また、次のような暗示をかけて問題を解決することもできます。
- 直接暗示
船酔いする人に対しては「船に乗っても絶対に酔ったりしない」という暗示をかける。 - 間接暗示
おねしょがひどい小学生に対しては「尿意を感じたら夜中でも目を必ず覚ます」という暗示をかける。
催眠状態では無意識の働きの割合が多くなるので、いろいろなイメージが広がり想像力が増すことが多くあります。
この催眠状態を利用しクライエントに自由にイメージさせることにより、かたくなに心を閉ざしているクライエントでも何を悩んでいるのか何を思っているのかなど心の内を伺い知ることもできます。
催眠療法の流れ
催眠療法を行う場合の流れは次のようになります。
- カウンセラーはクライエントを催眠状態に誘導します。
- 催眠状態に陥るとクライエントは次の状態になります。
- イメージが活性化し想像力も広がる
- 心身が睡眠と似たようなリラックスした状態になる
- ウトウトし集中力や注意力が低下してくる
- カウンセラーはクライエントが想像するイメージの世界に入り込み暗示を与え心に抱く悩みや問題を解消できるように導きます。