学生時代に条件付けと言う言葉を授業で聞いたことがある方は多くいると思いますが、動物に物事を学習させるための一つの方法でもあり、昔から多くの研究者の対象となっており、行動療法における理論の正当性を担保する元にもなっています。
レスポンデント条件付け(古典的条件付け)とは何か
条件付けという理論が正しいと言われる根拠は、人が物事を学習していく過程やその結果によって、その後の行動が決定されるという経験に基づいたものです。
現実社会においては、人が物事に失敗し痛い目にあった場合は、二度と同じことを繰り返して起こさないようにしようとしますし、幼児や児童でも両親から礼儀やしてはいけない事などを教えてもらい躾けされていくことにより、徐々に善悪の判断や社会性が身に付いていくものです。
パブロフの条件反射理論とは
ロシアの生理学者であったパブロフが創案したパブロフの犬の条件反射理論は、条件付けの理論の中でも世界的に認知度が高く有名な理論です。
パブロフの犬の条件反射理論では、まず最初の段階ではエサを犬に与えると、生理現象として唾液が出ます。
この時のエサは無条件刺激となり、唾液は無条件反射となります。
その後、犬にエサを与える際にベル音を毎回鳴らすことを繰り返していると、犬はエサが無くてもベル音を聞くだけでだけで、だんだんと唾液を出すようになってくるという理論です。
この時のベル音を条件刺激といい、音を聞いて唾液を出すことを条件反射といい、このような状況を専門用語で古典的条件付けともいいます。
パブロフの条件反射における形成過程について
1.条件反射形成前の状態
無条件刺激:エサ
→無条件反射:生理的唾液
エサ(無条件刺激)を犬に与えた場合、生理的に唾液(無条件反射)が放出されます。
2.条件反射形成中の状態
無条件刺激:エサ+条件刺激:ベル音
→無条件反射:生理的唾液
エサを与える際にベル音(条件刺激)を毎回犬に聞かせるようにしむけます。
3.条件反射形成後の状態
条件刺激:ベル音
→条件反肘:唾液
エサを与えなくてもベル音を聞かすだけで条件反射で唾液を放出するようになります。
アラームシーツ条件付け法とは
心理療法として古典的条件付けを利用した方法の一つに夜尿症を治療する場合に活用されているアラームシーツ条件付け法というものがあり知っている方もいると思います。
通常、人は就寝中でも膀胱に尿が溜まれば、自然と尿意を感じて目を覚ましトイレに行き排尿しますが、夜尿症の場合はを目を覚ますことがない為に、眠ったままの状態で排尿してしまうということが起こります。
この症状を改善するために、寝たままで排尿し寝床が濡れてしまった場合にはベル音を鳴らすことができるような装置を設置しておき、おねしょで布団が濡れるたびにベル音が鳴って強制的に起きるような状態を継続して繰り返していきます。
このような条件刺激を受け続けることで、そのうち犬の条件反射と同じことが起こり、おねしょをする前に目を覚ますことができるようになるというのがアラームシーツ条件付け法のしくみです。
また、条件反射は従来高等動物である哺乳類などだけが備えているものだと思われてきましたが、下等動物であるゴキブリなどにもこのような条件反射があるという事実が研究によって明らかにされてきました。
オペラント条件付けとは何か
先ほど紹介したパブロフの条件反射などの古典的条件付けは、どちらかというと受動的な学習方法といえますが、、アメリカの心理学者であったソーンダイクは実験研究を繰り返し行い、試行錯誤学習という自発的・能動的に学習していくという技法を考え出しました。
まず、BOXの中に腹を空かした猫を入れ、エサが入ったお皿をBOXの外に置きます。
猫がこのお皿のエサを食べるにはBOX内に設置された扉と繋がっているヒモを引いて開けることでBOX外に出てエサにありつけるという仕掛けが施されています。
最初、猫は全くこのようなしくみに気づきませんが、BOX内で動き回っているうちに偶然ヒモに足が引っかかって扉を開けることができました。
このような状況に何回も猫が遭遇することを繰り返していると、そのうちに扉の開け方を学習して、猫は自発的にヒモを引き扉を開けてエサを食べれるようになっていきます。
猫は何回も試行錯誤を繰り返すことで扉を開ける仕組みを学習して、好きな時にエサを食べれるようになりますが、これをソーンダイクの試行錯誤説、猫が学習していく習熟度を猫の試行錯誤学習曲線と言います。
アメリカの心理学者であったスキナーは、条件付けを次のように分類し行動分析学を体系化しました。
- パブロフの条件反射:レスポンデント条件付け(古典的条件付け)
- ソーンダイクの試行錯誤学習:オペラント条件付け
トークン・エコノミー法とは
このオペラント条件付けによる心理療法の一つにトークン・エコノミー法という技法があります。
先ほど夜尿症について紹介しましたが、トークン・エコノミー法で治療する場合は、寝たまま布団でおしっこをしなかった日にはコイン(トークン)をほうびの意味として与え続けるようにしていきます。
この状態を繰り返し行っているうちに、子どもはコインを欲しがり集めるようになり、しだいにおしっこを漏らさなくなってくるというしくみを利用した治療法です。
以上のような条件付けの理論は、現在もいろいろな教育の場で、児童や動物のしつけなどに取り入れられて活用されています。