グループ療法の一種にエンカウンターという技法があり、エンカウンターは、別名グループ・エンカウンターとも呼ばれます。
エンカウンター(encounter)は、自他との親密で深い出会いを表現しており、直訳すると「出会う/遭遇する」という意味の言葉になります。
ベーシック(非構成的)・エンカウンターの特徴
現在では、ベーシック・エンカウンターが有名ですが、元をたどれば次の2つの流れを引き継いでいます。
- ナショナル・トレーニング・ラボラトリー(NTL)
- カウンセラー養成ワークショップ(シカゴ大学で来談者中心療法のロジャーズらが実施)
この2つの手法は、アメリカが発祥となっているエンカウンターです。
1グループで10人程度の参加者が集まり、田舎や人里離れた宿泊場所で4日前後一緒に宿泊して行うのがベーシック・エンカウンターの特徴です。
グループにはファシリテーター役のリーダーを決めて、グループメンバー全体で、自発的・積極的に意見を言い合い、問題を解消するという事を主眼にして話し合いを進め交流を行います。
因みに、ファシリテーターとは、グループメンバー間の相互理解や合意形成を成立させるために、中立公正な立場で会話に参加し意見を調整するという役割を持っており、エンカウンターを行う上ではグループメンバーが成長していけるように支援することも担っています。
グループメンバーは、車座状態で輪になって各自の抱えている悩みや問題について発言していく過程を経て、徐々に親密な深い対人関係を築いていくことを体得していきます。
エンカウンターの意義
他人とのグループ交流の体験を通して、今まで以上に自己の理解を深め新たに認識し直そうとするのがエンカウンターの基本的な理念で、これがエンカウンターを行うということの重要な意義といえます。
グループになり人が集まると、互いに理解しようとする意識や雰囲気が自然と生まれ、徐々にですが参加メンバー各自の問題解決能力や自己理解力のレベルが引き上げられていきます。
また、エンカウンターには、他人との出会いにより人との接し方が学べますし、会話を通じて自己の内面をじっくりと見つめ直すことができるという2つのメリットがあります。
構成的エンカウンターの特徴
ベーシック(非構成的)・エンカウンターとは対照的なものに構成的エンカウンターという手法があります。
これは日本の心理学者であった國分康孝氏が考案した療法です。
構成的エンカウンターでは、課題やエクササイズなどのプログラムに基づき、ステップを踏んで段階的にリーダーが問題提起しながら話し合いを進めていくという手法をとるので、ベーシック・エンカウンターのような自発的で自由に話したりすることはできません。
構成的エンカウンターの進め方はバリエーションに富んでおり、数時間から数日間の期間で数十人から数百人の参加者が集合して行います。
具体的な進め方としては、数日間に渡り課題を各種設定して次のような形式順で実施されます。
設定課題は、自己表現や自己理解などそれぞれの段階で様々な内容が設定されます。
- 握手や軽体操などの導入
- 自己主張や自己表現の訓練
- 傾聴訓練
- 自己開示や自己理解
- 振り返り
ベーシック・エンカウンターと構成的エンカウンターの違いは何か
ベーシック・エンカウンターと構成的エンカウンターには、次のような違いが見られます。
構成的エンカウンター | 非構成的(ベーシック)エンカウンター | |
参加者 | 数十〜数百名。 | 10名前後。 |
期間 | 数時間〜数日間。 | 3〜5日間。 |
進行役 | リーダーが進行するがグループには参加しない。 | ファシリテーターとしてグループに参加しながら進行する。 |
主眼・比重 | 課題の比重が大。 | 人の比重が大。 |
対人交流の程度 | 浅い場合も有り得る。 | 深い。 |
実施内容 | プログラムに沿ってリーダーが課題提起して段階を踏んで話し合いを進めていく。 | ファシリテーターとメンバーが一緒に輪になって座り各自の問題や悩みを自由に話し合い意見を交換する。 |
利点 | 互いの信頼関係や暖かい交流があるラポールの状態を短時間で形成しやすい。 | 人間同士の深い交流や感情の解放により、不安や緊張の原因である感情や衝動を話すことを通じて解放できるカタルシス(浄化)が体験できる。 |
欠点 | 自分が主体になり自発的に発言したり、自分や他人との親密で深い出会いも不十分で、どこか充足されない感情を抱く場合もある。 | 効果を得られるまで時間が必要で、課題が十分達成できていない状態で終了してしまう場合がある。 |
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