心理療法やカウンセリングを成功させるには、カウンセラーとクライエント双方との間に良好な信頼関係が築かれる必要があります。
ラポールとは
クライエントが会話の中で自分の思いや心の内を安心して話せるようになってこそ心理療法は成立します。
ですから、クライエントとの間に、いかに信頼関係を構築できるかが心理カウンセラーにとっての最初の課題になります。
お互いに信頼し合う気持ちと、クライエントと心理カウンセラーの間に温もりある感情を持って交流できている状態をラポールといいます。
このようにラポールがクライエントとカウンセラーの間にしっかりと形成されていれば、会話をしていくことで症状が良くなることもあり、場合によっては心理療法が不要になることもあります。
心理療法が失敗する大きな原因に、クライエントとの間にラポールが十分形成されない心理療法を進めていることが挙げられます。
このような場合は、クライエントが心を開かず抵抗するので失敗に終わることが多くあります。
ラポールの有無 |
信頼度合 |
クライエントの思い |
ラポールのない状態 | 本当に信用できるかなあ? | 冷たそうな感じで、強制されているみたいで、いやだなあ。 |
ラポールのある状態 | 温かい雰囲気で信用できそう。 | 私がどんなことを言っても、何をしても受け入れてもらえそう。 |
転移とは
人が他人に相対した際に、なんとなく快・不快を感じるのは、過去に良い思いや悪い思いを別の誰かと経験したことを、無意識の内に思い起こし重ね合わせていることが多くあります。
今までに良好な関係を両親と保っていた場合は、両親と似た人を恋人や友人に選んだり、男性に散々な目に合わされた場合はは、苦手意識を男性一般に対し感じるようになる傾向があります。
このように、別の誰かに対しクライエントが過去の経験から心にしまい込んでいた特定の感情を心理カウンセラーに抱くことを転移といいます。
転移には、陽性転移と陰性転移の2種類あります。
例を挙げると、女性カウンセラーに対し、クライエントが自分の母親に対して向けていた感情を抱いている場合、母親に対して否定的であったのであれば陰性反応、好意的であったのであれば陽性反応となります。
- 陽性転移…好意的な感情が生じている状態
- 陰性転移…否定的な感情が生じている状態
心理カウンセリングや心理療法を行う場合、一般的には転移が起こりやすいので、カウンセラーは転移を診療の一つの手段として用いています。
面接の構造化とは
クライエントと世間話をするためにカウンセリングや心理療法で面接をするわけではありません。
ですから、カウンセラーは、面接全体を構造として理解し、クライエントと会話する中で小さな変化や本心を示す言葉を見逃さないようにすることが重要です。
面接全体を構造として理解することは、安心して心を開き、安全に面接を進めていけるという確認のために、クライエントにとっても必要なことです。
心理カウンセラーが次のような内容について具体的に説明することでクライ工ントの不安を軽減することができます。
- 守秘義務の契約…面接で話されたことが外部にもれることはないという説明
- 治療方針の説明…心理療法を今後どのように行うかという方針の説明
- 料金や時間の設定…カウンセリング料金や時間を事前に説明することで、クライエントに診療を受けていることを意識させ自助努力でも改善できるように本人の意思を高めることもできます。
面接を構造化する為の枠組み
心理カウンセラーは、面接の進め方についてクライエントと次の事項について確認しておくことが大切です。
- 目標の設定
- 秘密保持の約束
- 用いる技法の説明
- 条件面(科金、面接頻度、時間など)