自律訓練法とは、自己催眠の一種で、場所や時間に関係なく、誰でもあらかじめ定められている手順通りに簡単に行うことが可能なので、様々な分野で活用されています。
自律訓練法とは何か
自律訓練法は、ドイツの精神科医であったシュルツによって1932年に考え出された催眠療法の一つです。
一般的な催眠療法は、クライエントが受動的にカウンセラーや催眠療法士からの暗示の働きかけによって誘導され催眠状態へ入っていきます。
一方、自律訓練法は、行動療法とアプローチが似ており、クライエントが自分で自己催眠をかけ自らの力で心の問題を解決していく治療方法になります。
具体的に言うと、自律訓練法は、自分の身体の各部分に順次注意を集中し、心身を自己暗示の力によって弛緩させて、トランス状態に自分の意識を誘導し、心身を心地よい状態に整え維持していこうとする技法です。 自律訓練法の利点は、たった一人で自宅でも行えますし、大勢で集団になっても慣れればどこででも実践することが可能です。
しかし、自律訓練法を行ったからと言ってすぐに効果がでるわけではありません。
定期的に日々継続して訓練していくという自主性と意思がなければ進めていけないので、原則10歳以上くらいにならないと実施していくのは困難であるといわれています。
自律訓練法を継続して行うことで、血圧、呼吸が落ち着き、消化器官の機能も良好になり、次のような効果があると言われています。
- ストレスの解消、心身疲労の回復
- 学力の向上
- 創造性の助長・開発
- あがり症の改善・克服
心理面の臨床効果としては、つぎのような症状を解消できる効果があります。
- 車酔い
- 不眠、吃音
- 夜尿症
- 心身症
- 神経症
また、呼吸器疾恵、糖尿病、心臓疾患、精神疾患などの患者が自律訓練法を行う際は、専門家の指導に従い慎重に実施する必要があります。
催眠療法の一つである自律訓練法は、今でこそ世間でもよく知られた療法ですが、元をたどれば、ドイツの医学者であったメスメルを発端として、その後ランスの神経科医であったシャルコーなどの先人達が苦労して催眠療法を発展させてきたおかげで、現在の自律訓練法の誕生につながっています。
自律訓練法の実施方法
手順1
腰かけ姿勢、背もたれ姿勢、仰向け姿勢など、心身が弛緩しやすい姿勢になり目を閉じます。
手順2
次の1〜7の順番で、決められた言葉を繰り返し暗唱します。
1ステップずつ訓練し、できるようになれば次のステップに進みますが、1ステップを1週間かけて体得していくのが目安になります。
以下は唱える言葉として公式に決められている文言です。
- 心の中で何度も「気持ちがとても落ち着いている」と唱えて、リラックスする。
- 心の中で「右腕か重たい」と唱えて、右腕の重さを感じる。
- 心の中で「左腕が重たい」と唱えて、左腕の重さを感じる。
- 「両足が重たい」と唱えて、両足か重くなるのを感じる。
- 「右腕がとても温かい」「左腕がとても温かい」「両足がとても温かい」を順番に唱えて、それを感じる。
- 「心臓が静かに規則正しく打っている」のを感じる。
- 「呼吸が楽になっている」のを感じる。
- 「胃のあたりがとても温かい」のを感じる。
- 「額が涼しくて心地よい」のを感じる。
自律訓練を行う場合は、次の要領で行うことが大切です。
- 時間:5〜10分間/1回
- 頻度:朝・昼・晩/日
- 期間:1週間/1ステップ
なお、1ステップ体得すれば次のステップへ進んでいきます。 - 5〜10分間の訓練内容:
次のようなサイクルでトータル5〜10分間に収まるように行います。
訓練(30〜60秒)→休息(約30秒)→訓練(30〜60秒)→休息(約30秒)→訓練(30〜60秒)→休息(約30秒)・・・・・・。
以上のような手順で段階を踏んで実施することにより、次第に「心身の調節」ができるようになってきます。
その結果、心の悩みや問題を解消することに繋がっていきます。
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