心理テストを活用し、心理アセスメントを行う際には、面接法や行動観察法とその他のテストを数種類組み合わせて実施することが必要になります。
テスト・バッテリーとは
心理アセスメントで診断する場合は、心理テストを複数組み合わせて行う必要があります。
これは的確な判断結果を示すためには不可欠であり、1種類の心理テストでは信頼性と正確性が低くなるからです。
このような心理テストの実施方法をテスト・バッテリーと呼びます。
クライエントがカウンセラーに相談するのは、様々な問題を心に抱えているからで、クライエント本人が認識している問題のことを主訴と言います。
生徒が通学を拒むようになり来談した場合、不登校が主訴ということになります。
但し、問題の根本原因が必ず主訴とは限りません。
主訴を元に詳しく探っていくと精神的な問題、知能障害、劣等感、家族内の問題などが、不登校の根本的な原因として明確になることもあります。
心理アセスメントはこのような主訴の真の原因を見つけ出すために必要な技法となります。
行動観察法や面接法が心理アセスメントを行う際の中心技法となりますが、その他複数の心理テストを組み合わせて用いられるのは、より精密で正確な結果と客観性を確保するためです。
不登校の場合は、次のような心理テストが用いられます。
クライエントの性格など心の内面を診断する場合- 性格検査の質問紙法:エゴグラム
- 性格検査の投影法:SCTやバウムテスト
- 知能検査:WISC-Ⅲ
- 親子関係診断テスト
このテストで問題が親子関係に起因すると診断できれば、カウンセリングを親に行い不登校の問題が改善されるケースもあります。
クライエントの来談から治療までの流れ
プロセス | 内容 | |
1 | 来談 | 母親が不登校で悩む子供を連れて来談 |
2 | 面談 | カウンセラーは主訴を理解する。(不登校) |
3 | 心理テスト |
心理テストをいくつか組み合わせて不登校の原因・症状を診断する。(テスト・バッテリー) 但し、テストを複数組み合わせて実施する際は、結果がクライエント本人に推測できるような知能検査は後回しにすること。
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4 | 治療 | ― |
信頼性の高い心理テストとは?
心理テスト実施後の診断結果は、相談者の性格や人格がクローズアップされるので、与える影響も重く慎重さが要求されます。
よって、テストを行う場合は、厳格に妥当性、信頼性、実用性について判断する必要があります。
よい心理テストとは何か?
項目 | 測定度合い | |
1 | 妥当性 |
測定したい内容がテストを行って適切・的確にどこまで測定できるのか?
性格を調べたいという目的の場合、満足いくテスト結果は得られるのか? |
2 | 信頼性 |
誰がいつ測定してもテストの採点結果は、同じ結果を得ることができるのか?
採点者が複数いても結果は同じかどうか? |
3 | 実用性 |
テストの実施や採点は行いやすいか、面倒ではないか、多くの使用に対応できるのか?
実施方法、採点方法、時間、費用などの実用性に無理はないか? |
心理テストの標準化について
テスト精度を向上させるために、心理テストを作成する場合の標準化が行われています。
なので、心理テストが漫画や週刊誌などに掲載されている場合がよくありますが、ほとんどが「標準化」の流れに基づき作成されていない、単なる遊びと同じ類のものだと言えます。標準化の流れ
プロセス | 作業内容 | |
1 | 原案の作成 |
目的を明確化し、性格、知能、適性などについて原案を作成。
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2 | 予備テストの実施 | 所要時間や難易度などについて、対象者や集団にテスト原案を行い測定。
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3 | 原案の検討・修正 | 必要と考えられる修正個所があれば、予備テストの結果から適宜実施。
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4 | 本テストの実施 | 適正度については多くの被験者に実施して確認。
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5 | 解釈・判断基準の設定 | 診断を決定するための判断基準・尺度を、本テスト結果の統計処理を行い定める。
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6 | テストの最終確認 | テストの妥当性、信頼性、実用性に関して再度検討。
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