グループ療法とは、大勢の人と接して話をしたり励まされたりしながら仲間意識を感じ、自分は孤独ではなく多くの人から助けられ守られているんだという人間の集団心理を利用した心理療法です。
同じような悩みを持つ大勢の人と交流する中で、人の温かさや安心感を肌で感じることができ、心の問題を改善するために役立つと言われています。
グループ療法とは何か
通常は、クライエントの心の問題を解決するための心理療法は、カウンセラーとマンツーマンの関係で実施されることがほとんどです。
ですが、同じような悩みや問題を心に抱えたクライエントの場合は、心理療法を実施する際に集団になって行う方が、一対一で行うよりもさらに高い治療効果が期待できる場合あります。
グループ療法とは、クライエントが集団で心理療法を受ける時の総称のことで、グループメンバー同士で自分が抱える悩みや問題を個々に自由に語り合います。
グループ療法を行う際は、同じ課題や問題を持ったクライエントが集まるケースがほとんどです。
それは、他人の話を聞いているうちに、同じ悩みを持った現在の自分を客観的に見つめることになり、本当の自分の姿が見えてくるようになるからです。
グルーブ療法は、人間を心から癒せるのは人間しかいないという考え方に基づいており、同様の課題を抱える人が集まり、集団での体験を通して、生き生きとして活動できる本来の自分を取り戻すことが出来ます。
クライエントは、グループになり語り合うなかで、「自分は一人ではなかった」「話を多くの人に聞いてもらえた」「今まで話せなかった悩みも言えそう」「多くの人がいるので守られていて安心できる」「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」など、他人を鏡として様々な気付きを得ることができ治療に繋がっていきます。
グルーブ療法は、心の成長を促すという効果もあるため教育分野でも活用されています。
集団でグループ療法を行う場合は、次のような相互作用が期待できます。
- 受容
- 共感
- 普遍化
- 同一視
- 転移(陽性・陰性)
- 競合
また、カウンセラーはグループ療法の治療効果を高めるために、上述した相互作用を活用して次のようなことに配慮することも重要になります。
- グループ全体が成熟できるように手助けする。
- 参加しているそれぞれのメンバーが成長できるように手助けする。
- どのような話をしてもOKというような自由な雰囲気を作る。
- どのような話をしても否定することなく聞いてもらえるという信頼感を構築する。
グループ療法の種類について
グループ療法の始まりは、当時では完治できない重い病でもあった肺結核を患っている患者に対して、アメリカで内科の医師をしていたプラットが1905年に行ったのが切っ掛けだとされています。
このことでグループ内相互作用の働きを利用して、同じ肺結核患者達が病に立ち向う強い意志や精神力を向上させることができて、その結果治療を促進させる原動力になったことがグループ療法が始まる起源となりました。
グルーブ療法の種類には、次のようなものがあります。
- アクション志向:
交流分析、構成的エンカウンター、サイコドラマ - 精神分析志向:
言葉を交わすことを通して洞察をさせるもの - 行動療法志向:
モデリングや適応行動の強化がメインとなるもの - グループ体験、家族療法、治療キャンプ:
施設の子供、アルコール依存症患者などの不安を取り除くことを目的とするもの
グループ療法のメリットとは
グループ療法と現実社会の人間関係という観点から見れば、どちらも複数の人間が関与し合うという構造になっており、クライエントはグループ療法に参加することで、実社会を疑似体験できるという利点があります。
クライエントは、グループ内では援助を受ける者としての立場と、援助を行う者としての立場を同時に担うことになり、このような集団の中でしか体験できない環境が治療効果を促すことになりやすいとされています。
特に都市化や少子化が進んでいる現在の社会環境下で育った多くの子どもは、ごく限定された狭い範囲での人間関係しか体験できず、他人と上手く関わりを持って友好関係を築いたり関わったりする機会もほとんどありません。
その結果、社会では集団活動が基本になりますが、仕事や生活に馴染めないという子供も多くなっています。
今も問題になっている、いじめや暴力行為、不登校も、このことが要因の一つになっている可能性があります。
集団活動や団体生活では、自分の意見や思いを相手にしっかり理解してもらえるように話し伝える力や、相手の意思や立場を考え思いやりを持って言動を行うことが必要になります。
そのことからグループ療法は、核家族化が進み人間関係も希薄になる中で、他人との接し方や関わり方を体験し学習できる場として再び注目されています。
グループ療法の効果は
グループ内では、自我のぶつかり合いが起こり、過去の体験による感情や否定的な感情を感じ、また共感したり受容したりと、メンバー同士で様々な交流があり、迷いを感じ模索をしたりすることになります。
その結果、次第に自己への気付きや他者への理解が深まり、自分の存在を再認識でき自分と他者について新たな発見ができて、物事や出来事の見方も変容し人間関係も成熟していけるようになります。