認知行動療法とは
認知療法と行動療法の2つの理論が融合して誕生したものが認知行動療法と呼ばれるものです。
アメリカの医学者、精神科医であったアーロン・ベックらが1960年代に開始した認知療法の流れと、ウォルピ、アイゼンク、スキナーらが1950年代に開始した行動療法の流れとが融合し、現代の心理療法の一つである認知行動療法が誕生しました。
行動療法は、外面から見える人の行動内容に注目し、過去の不適切な学習により問題行動が発生するのだから再学習することで改善させられるというものです。
一方、認知療法では、人の内面に焦点を当て、認知のゆがみを修正し問題を解決しようというものです。
生活周辺の外部環境が人の悩みや問題の根本原因ではなく、置かれた環境に対して本人がどのように捉えているか認識の仕方によって結果が左右されるということが認知療法の基本的な考え方です。
例えば、自分はなかなか結婚できないのに友人は既に結婚しているというケースでも、「美人なのに私だけなぜいつまでも独身なんだろうか」と心に孤独感を覚える人と、「時期が来たら私もそのうち結婚できるよね」と心配せず楽観的に考える人の2通りがあります。
この差がでるのは、本人の認知の違いにより考え方が異なってくるからです。
認知行動療法では、まずクライエントが「何を普段考えているのか」、「どのような信条・信念があるのか」に着目します。
次にその中の考え方や思考パターンで不合理なものは改めていくようカウンセラーが認知のゆがみをクライエント自身に気付かせることにより悩みや問題を改善・解決していきます。
論理療法とは
論理療法は、アメリカの臨床心理学者であったアルバート・エリスが考案した認知行動療法の一種です。
これは、クライエントが持っている信念や常日頃抱く考えが原因で不合理な問題や悩みを生じさせる言動を引き起こしている最中に、カウンセラーがその言動について論理的に反論し、本人の物事に対する考え方や信念を変えるのが目的です。
例えば、「失敗したら絶対だめだ」という脅迫めいた思い込みを持ち過剰なプレッシャーとストレスを抱えて悩んでいるクライエントがいるとしましょう。
このとき、カウンセラーは論理的に次のような言葉を投げかけ質問します。
- 「もし失敗すればどのような問題が発生しますか?」
- 「あなたの生活にどんな影響が及びますか?」
クライエントには、この質問内容をじっくりと考えさせることで、実際は「失敗したところで人生全てが終わるわけではないし、全てを失うわけでもない」ということに気付かせて、考え方や信念が変化すれば、クライエントはプレッシャーやストレスから解放され心が楽になるわけです。
アルバート・エリスは、クライエントの認知の歪みについてABC理論を通じ、次のような考え方を提唱しました。
物事(Activity)は、信念(Belief)を通して常に歪められ、行動(Consequence)はその結果として表れる。なので、物事(Activity)を捉えるには、信念(Belief)なくしては何もできない。
通常、問題発生の原因となる認知の歪みは、世界観・未来観・自分自身の3つに関して悲観的な形で表れるようになります。
論理療法では、虫メガネを通し不合理に世界観・未来観・自分自身を捉えてきた信念や考えに対する問題点をまず明確にすることが、苦しみや悩みを解決するための第一歩だと言えます。