人が心身の疲れなどを癒すには、音楽を聞いたり、歌を歌ったり、絵を描いたり、ダンスをしたりなどアート活動を行うこともストレスを発散する方法の一つです。

人の本質に通じる芸術活動を通じてアプローチできる心理療法の一つが芸術療法と言われるものです。

芸術療法とは何か

 芸術療法は、アート・セラピーとも言いますが、ダンス、演劇、音楽、俳句、絵画、陶芸、彫刻などのいろいろな芸術活動を行い、自分を表現することで心に抱える様々な問題を改善していこうとする心理療法です。

元来人間は、自分の心に抱いている考えや思いを目に見える形で表現したいという潜在的願望があるものだと心理学者のマズローも唱えており、芸術活動で作品として表現したり、完成させることで得る満足感や充実感は、心の治癒に好影響を与えると言われています。

と同時に、体を動かして表現するダンス・演劇・歌や絵画・彫刻など心の内面を表現する行為は、カタルシス効果があると考えられています。

また、クライエントの心の内面が完成した作品には投影されていると考えられるので、いろいろな心理療法の技法を用い治療を行う際も有効活用することができます。

芸術療法を効果的に活用できる対象者は、自分の考えや思いを上手に言葉で表現出来ない児童や障害者になります。

それは箱庭療法とよく似ていて、完成作品からクライエントの心の問題がどのように投影・表現されているかを解釈・分析し、治療に繋げていくという技法だからです。

但し、クライエントの中には表現する行為自体に拒否感を示す人もいるので、強引に治療に用いるのは 芸術療法は、自分の思いを自由に表現するという行為が大切なので、芸術的な出来栄えは関係ありません。

児童はお遊戯やお絵かきという行為を楽しみながらすることで気持ちが安定しますが、大人のクライエントの場合も同じで、作品の出来栄えを気にせず思うままに自由に表現することで治療効果が期待できます。

心の内の表現法

 自分の内心を表現するには、大きくは次の2つの方法があります。

  • 言語による表現:
    他人と会話し言葉で思いを表現する。
  • 芸術による表現:
    体を動かしたり、なにか作品を作って表現する。

芸術療法は、アート活動を通じクライエントが次の効果を得ることで、心の問題を改善していくことができます。

  • 作品創りという過程や完成作品を鑑賞することでの治癒効果
  • 作品を通じて表現することによるカタルシス効果
  • 心の無意識を作品に投影させ治療に繋げれる効果

芸術療法の種類

描画療法

 描画療法とは、標準的な絵画療法のことです。

絵画療法は簡単で便利なことから芸術療法でも、使用頻度が一番高い技法です。

作品から投影されたクライエントの内面を読み取るためにテーマのみ設定し、自分の思いのままに絵を描かせていきます。

コラージュ療法

 コラージュ療法は、描画の代替え方法にもなり、絵画などが苦手なクライエントに有効です。

新聞・広告・本・雑誌などから好きな画像などを切り抜き貼り付けていき作品が完成できるからです。

なぐり描き(スクィグル)療法

 なぐり描き療法は、頭に思い浮かんだ絵をカウンセラーとクライエントとが交代で順に描いていきゲーム感覚で最終的に1枚の絵を仕上げていきます。

この方法は、互いに助け合いながら協力して絵を完成させるため、カウンセラーとクライエントとの間に信頼関係が構築されやすく、緊張感も和らげる効果があります。

この技法は、イギリスの小児科医・精神分析家のウィニコットが考え出した療法です。

その他の療法

 上記以外で認知度の高いものでは、音楽を演奏したり鑑賞したりする音楽療法があります。

芸術療法というと固苦しいイメージがありますが、なにか表現できるようなものであれば、クライエントの嗜好に合わせてどんなものでも芸術療法として活用可能です。

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