来談者中心療法は、クライエント自身に徹底して焦点を当て療法していく方法です。
来談者中心療法とは何か
来談者中心療法が登場する以前は、心理分析や理論に重点を於いた精神分析療法や、現在の問題行動だけにポイントを於いて効率的な治療効果を目標とする行動療法への反論として注目されたのが、来談者中心療法です。
来談者中心療法は、アメリカの臨床心理学者であったロジャーズが創案した療法で、クライエント自身が自ら治癒する力や精神的に成長する力を潜在的に持っていると考えました。
そして、クライエントの心理的な問題を解決するには、人間性に優れ豊かな感性を持っている心理カウンセラーが、心からクライエントの思いや話に共感し、じっくりと傾聴(耳を傾けること)することにより改善されると考えました。
来談者中心療法による治療を行う為の必要十分条件についてロジャーズは、次の6つを掲げています。- クライエントが自己不一致の状態にあること
- クライエントとカウンセラーとの間にラポール(信頼関係)が成立していること
- カウンセラーが自己―致の状態にあること(純粋さ)
- カウンセラーが無条件の肯定的関心をクライエントに持つこと(受容)
- カウンセラーが共感的な理解をクライエントに対して抱いていること(共感)
- クライエントにカウンセラーの受容と共感が伝わっていること
上記の中でも3項から5項までをカウンセラーの3条件といいます。
クライエントが自身の問題に真正面からしっかりと向き合うことができるのは、この3条件をカウンセラーが満たしているかどうかがポイントになるとロジャーズは主張しました。
その結果、人格的な資質が心理カウンセラーには厳しく求められるようになりました。
来談者中心療法の必要十分条件の内容
1. クライエントが自己不一致の状態にあること
実際に経験した自己概念と自分が思い描く自己概念とが一致している場合は心理的に安定しますが、一致する部分が少ない場合は自己不一致の状態となり問題が起こりやすくなります。
2. クライエントとカウンセラーとの間にラポール(信頼関係)が成立していること
クライエントとカウンセラーとの間に信頼関係が構築されていることで、クライエントはカウンセラーに心を許し、内面で思う事や考えることを遠慮なく話すことができるようになります。
3. カウンセラーが自己―致の状態にあること(純粋さ)
自己―致の状態にあるとは、態度に裏表がなく、カウンセラーの純粋な心の状態を指します。
カウンセラーの言っていることと言いたいことが一致していない場合、安心してクライエントは話をすることができません。
4. カウンセラーの無条件の肯定的関心(受容)
クライエントが話す内容や行動について、カウンセラーは批判的な態度を取ったりせず、肯定的に無条件で受け入れなければなりません。
5. カウンセラーが共感的な理解をクライエントに対して抱いていること(共感)
クライエントの体験や内面の心理状態を、カウンセラーも自らの事として感じ理解する態度が必要です。
但し、共感しすぎて自分自身を失わないように注意が必要です。
6. カウンセラーの受容と共感がクライエントに伝達
傾聴によって、カウンセラーの受容や共感の姿勢をクライエントに伝えていく事により、クライエントとの間にラポール(信頼関係)が成立し、クライエントの変容に繋がるよう影響を与えることができます。