行動療法は、現実主義のアメリカで活用され発展してきました。
人が今までの生活環境で身に付いてしまった不適切な行動パターンや物事に対する考え方を、再度学習させることで適切な方向に軌道修正するための療法です。
行動療法の特徴
アメリカの心理学者であったスキナーが行動療法という言葉を最初に使用しました。
スキナーは、統計とデータに基づく科学的な唯一の心理学が行動療法の基となる行動分析学だと考えました。
そこで、この普遍的で客観的な方法こそが、論理的な必然性がなく、カウンセラーの経験や考えに頼る心理療法の世界には必要だとして一石を投じました。
行動療法は、その後ウォルピやアイゼンクらによって療法として確立され、学習理論が療法の基本となっています。
行動療法は、客観的に行動を測定できる次のような症状を治療の対象としています。
- 神経症
- 心身症
- 不安
- 不登校
- 言語障害
- チック
目をパチパチさせる・声を発する・首を振るなどの行為を自分の意思に関係なく行うこと
これは、他の心理療法と比較しても治療の目標も明確で治療期問も短いからだとしています。
上記のような障害は、適応行動の未学習か、不適応行動の学習によって起こるものだと行動療法では考えます。
そのため、問題を解決するために、適応行動を学習させることで行動が変容し改善されていくとしています。
行動療法での治療のターゲットは、現時点での行動が対象になるため過去の行動は問題にしません。
また、自分自身の行動や考え方を自分の意志でコントロールできるようになることが、この治療の最終目標になります。
行動療法の技法の種類
行動療法には、様々な技法がありますが、主な次の3つの技法について解説します。- 主張訓練法
- シェイピング法
- 系統的脱感作法
主張訓練法について
主張訓練法は、自己主張させる訓練を繰り返すことにより、自己主張が苦手なクライエントに、対人場面での極度の緊張感・不安感を軽減させていく方法です。
具体例:
気が弱く人から頼まれたらNOと言えないクライエントに無理な頼みごとをして、それにNOと言わせる訓練を施していきます。
シェイピング法について
シェイピング法は、目標とする行動|こ達するまでのプロセスを何段階かに分割し、簡単な行動から難しい行動へと段階を踏んで徐々に達成させていくことで、最終目標とする行動を習得させるという方法です。
具体例:
不登校の学生に対しては、次のような過程で訓練し、最終的には学生自身が一人で通学し登校できることを目標とします。
- 親も学生と一緒に登校して、授業を学生の隣に座って受けます。
- 親は学生と一緒に登校しますが、授業では後ろの席に座り離れた場所から見守ります。
- 親は授業が行われる教室内に入らずに廊下から見守ります。
系統的脱感作法について
系統的脱感作法は、自律神経系の反応と反対の作用を司っている筋弛緩反応を起こすことで、不安や恐怖といった自律神経系の反応を弱めることができるという原理を利用し恐怖感・不安感を解消していく方法です。
具体例:
- 不安階層表という、恐怖や不安を想起させる場面を、その強さのレベルによって段階的に並ベたものを作成します。不安階層表で作成した中で弱いものから順番に恐怖や不安を想起させる場面をイメージし、同時に筋弛緩反応を起こすことで、恐怖心や不安感を打ち消していきます。
- この方法では、不安を弱く感じるものから強いものへと段階を徐々に上げていくことで、恐怖心や不安感自体を解消することができます。