投影法とは
絵・模様・文章など曖昧なものを見せてそれに対する反応を分析する技法を投影法といいます。
深層心理を分析する手段として活用されることも多いですが、心理臨床家の考えや主観が分析結果を解釈する際に影響するため、正確な判定結果を導きだす場合は難易度が高くなります。
一方、クライエントからは質問内容と回答結果との関連性は見えにくいので、質問紙法と比べても歪曲しにくい点がメリットです。
ロールシャッハ・テストとは
投影法の心理テストでも最もメジャーな技法がロールシャッハ・テストになります。
クライエントに対し、いろいろな模様をインクのシミで作成したものを10枚印刷したカードを見せて「何に見えるか」を質問して、回答した内容からクライエントの性格や病状を分析する方法です。
インクを紙に垂らし2つ折りにして作成した模様は、シミが偶然性によりできあがるので、何か特定のものを表した模様にはならず、人それぞれ様々な物に見えるようになっています。
反応内容・反応速度・反応領域など分析結果には、ある基準が定められていますが、大くの部分が心理臨床家の主観や解釈に依存することになります。
ロールシャッハ・テストは、一般的にも広く知られていますが、専門家の中には実効性に疑問を持つ者も少なくありません。
TAT(主題統覚検査)とは
投影法の心理テストにTATという技法がありますが、ロールシャッハ・テストでは抽象的分析に傾きがちなので、その欠点を補うためにマレーとモーガンという心理学者が1935年に考案した技法です。
この技法は、風景や人物が描かれている図などをクライエントに見せて、その場面はどんな状況で何をしているのかを感じたことを元に物語を作成してもらう心理テストです。
クライエントの性向や欲求がTATによってクライエントが作成した物語には反映されます。
端的にTATでどんな結果を得られるかといえば、悲観的な場合は暗い物語を、楽天的な場合は明るい物語を作成する傾向が多く見られます。
また、子どもに対する検査方法としては、CAT(児童統覚検査)と呼ばれている方法があります。
SCT(文章完成法テスト)
SCTは、日本で考案された投影法の心理テストの一つで、クライエントに未完成の短文を見せて、その文章の続きを書き出してもらうという方法で行います。
「他人から…」「幼少期の頃は…」などのクライエント自身について書かれた内容から、性格を直接的に把握できる心理テストと言えます。
SCTは、実際の行動観察は伴いませんが紙上で行われた面接ともいうことができ、ロールシャッハテストやTATと比較しても、質問紙法により近い手法と言えます。
投影法の種類と特徴
ロールシャッハ・テストは、深層心理について分析するので、正確に解釈するのは心理臨床家にとって困難ですが、その分クライエントも回答を意識的に操作しづらい方法です。
TATは、ロールシャッハ・テストとSCTの中間に位置する検査手法です。
SCTは、意識している心理をクライエントから具体的に聞き取っていくので、解釈するのは難しくありませんが、クライエント側からは回答を意識的に操作しやすい手法といえます。
投影法の3つの種類と特徴は次の通りです。
項目 |
ロールシャッハ |
TAT |
SCT |
心理の深さ | 深い | 中間 | 浅い |
検査結果の解釈の難易度 | 高い | 中間 | 低い |
クライエントによる意識的操作 | しずらい | 中間 | しやすい |