人生において、家族や知人など自分にとって愛する人や大切な人、長年飼ってきた犬猫などのペットが亡くなったっ場合、心に大きな悲しみや喪失感を与えることになります。
そこで、愛する人やペットとの別れや死に対して、心に抱く悲嘆などの痛みを和らげるための心理療法をグリーフ・セラピー、グリーフ・ケアといいます。
グリーフとは何か
グリーフ(grief)は日本語では悲嘆と訳され、悲しみ嘆くという意味です。
人は、自分の家族など心から愛する人の突然の死に直面した場合、真正面から受け止めることが出来ず精神状態が不安定になり、思考や感情を取り乱し、その結果いろいろな問題ある言動を引き起こす場合があります。 このような状態までに至る反応のことを悲嘆と言います。
悲嘆は、身の周りの人との付き合いや関わり方、時の経過によって悲しみも次第に薄れ徐々に心が癒されていきますが、一般的な病気治療のように完全に解消されることはありません。
対象喪失感に襲われることが悲嘆(グリーフ)の主な原因になり、次のような出来事が発端となります。
- 愛する人・親しい人との死別による場合
- 失恋、離婚、別居など愛する人・親しい人との生別による場合
- 就職、転職、離職、進学、転校、退学、引っ越し転居、海外赴任による移住など、住み慣れた場所や親しんだ職場などとの別れによる場合
悲嘆(グリーフ)は、自分の意思や信念に沿わない出来事に直面したり、急に別れが訪れたりした際に最も大きくなる傾向にあります。
悲嘆(グリーフ)の12プロセスとは
日本の上智大学の名誉教授としても有名な人物ですが、ドイツ人のカトリック神父でもあるアルフォンス・デーケンによれば、悲嘆(グリーフ)は、次のような段階を得て進行し回復していくと分析しています。
- 精神的打撃と麻痺状態
- 否認(別れを受容できない)
- パニック(精神的に混乱)
- 怒りと不当感(なんでこんな目に私が合うのかという思い)
- 敵意とルサンチマン[恨み](嫉妬・羨望・怨恨などの根深い感情)
- 罪悪感(自分が原因でトラブルが起こったという後悔の念で自分自身を厳しく責める感情)
- 空想形成、幻想
- 孤独感と抑うつ
- 精神的混乱とアパシー(無関心)
- あきらめ、受容
- 新しい希望( 笑いを誘うしゃれなどの再発見)
- 立ち直りの段階(新しい個性やキャラの確立)
グリーフ・セラピーとは何か
グリーフ(悲嘆)の実例としては、日本では阪神大震災、東日本大震災など、大きな自然災害により多くの家族や友人が心を痛めるている現状が今でも続いています。
海外においてもアメリカの同時多発テロ事件は世界中に衝撃と恐怖を与え、家族・友人・恋人などの死によって突然の別れに直面してしまった多くの方の心の痛みは計り知れないものがあります。
クリープ・セラピーにおけるカウンセラーは、「自分だけたった一人取り残されてしまった」というクライエントのグリーフ(悲嘆)を軽減させれるように、様々な手段を用いて当事者の心のよりどころを再度築き直すことができるようにしていくことが大きな役割になります。
クライエントは、自然災害・事件・交通事故・病気などを原因としてグリーフ(悲嘆)により、感情的に錯乱状態に陥り、自殺念慮などのいろいろな問題言動を引き起こすことになります。
カウンセラーは別れという現状を受け止め理解し認識できるようにし、心のよりどころの再構築を図れるように 援助していきます。
一般的な事例では、子どもが交通事故に遭遇し死んでしまった場合などは、母親の話をじっと聞いてあげる(傾聴)ことがなにより大切です。
グリーフ・セラピーには標準化されたような手順や技法はありませんが、傾聴するというカウンセリングの基本に従いじっくりと対応していくことが重要です。
そういう意味からしても、グリーフ・セラピーを行うことは今後もますます重要になっていくと思います。