臨床心理学はいつどこで始まったのか?

 「臨床心理学」という呼び方は、1896年にアメリカの心理学者ウィトマーがペンシルベニア大学に身体障害者・学習障害者・精神障害児の治療を目的とした心理クリニックを創設した当時、治療している際に初めて使った言葉だと言われています。

 ですが、今の臨床心理学のように総合的学問としての言葉の意味付けはありませんでした。

そうはいってもウィトマーが心理学的に個人レベルで問題を解決するため、このような試みを行ったことは、現在の臨床心理学への第一歩になったといえます。

またウィトマーは、当時ドイツの心理学者ヴントの研究室でも学んでいました。

 その後、臨床心理学は、精神医学に影響されながら徐々に次のように体系化されていきました。

  • 1890年:アメリカの心理学者キャッテル…初めて「メンタルテスト」という言葉を使用。
  • 1905年:フランスのビネー…知能検査を考案。

以上のような経緯から心の測定が可能と考えられるようになり、精神測定学が誕生しました。

 1909年には、フロイトがアメリカのクラーク大学で講演したのをきっかけに、精神分析への関心がアメリカ中で高まり、心理療法を研究する力動精神医学を基にした力動心理学が誕生しました。

 アメリカでは、20世紀の初め以降、兵士採用時の適性検査、青少年の非行問題・精神障害などへの関心が深かったため実用的な目的から、精神測定学と力動心理学を中心とした研究がなされ、現代の臨床心理学の発展へ繋がることとなりました。

臨床心理学の2大源流とその後の発展

学問 根本的な考え方 発展した療法・技法
精神測定学 ●心理テスト・測定器具の開発

 心は測定することができるという考えに基づく。
意識はいくつかの心的要素で構成されるとするヴントの考えが源流。

●知能検査などの心理アセスメントに発展

 知能検査積み木などの道具へ。

力動心理学 ●精神分析療法の流行

 心的現象の原因を心の中に求め、その影響や因果の関係を明らかにしようとする。フロイトの精神分析学が中心。

●心理療法などの心理的援助に発展

臨床心理学の歴史の流れ

 20世紀前半には、スイスのユングは分析心理学を提唱し、フロイトの弟子であったオーストリアのアドラーは個人心理学を提唱しました。 精神分析を出発点とするアドラーやユングの考え方は、臨床心理学にとって重要な意味があり、アメリカの心理臨床家に大いに活用されました。

 また、アメリカの心理学者ワトソンは、アドラーやユングのように人の意識ではなく、人の行動に注目して「人間の行動は刺激に対する反応から起こる」という行動主義を唱えました。

 20世紀半には、アメリカの心理学者スキナーらによって刺激が直接人間の行動につながるのではなく、その間に仲介するものがあると考える新行動主義も提唱され行動療法が確立されました。

 またアメリカの臨床心理学者ロジャーズは、治療者の人間性を重視する来談者中心主義を提唱し、来談者が自分で問題を解決するのを手助けする来談者中心療法を公開しました。

 20世紀後半には、個人が抱える問題は、個人の家庭・家族の維持・発展の過程で起きる現象とみなし、家族のしくみを変更することにより個人の悩みや問題を改善しようとする家族療法が行われるようになりました。

 20世紀の終盤にも、認知療法を始めとする様々心理療法が誕生しました。

その後、上記のような心理学的療法・技法を統合する流れになり、認知行動療法という行動療法と認知療法が融合した心理学的療法などが誕生することになりました。

20世紀にアメリカで発展した3大心理療法について

三大療法 内容 提唱者 主張
行動療法 客観的に観察可能な人間の行動から心を分析しようとする療法。 ワトソン 意識や無意識は主観的なもので心理学は客観的に観察できる行動のみ研究するべき。
精神分析 意識だけでなく無意識を重視し、動機の起源を幼児期の体験と考える分析法。 フロイト 実用的であることが大切なので定式化することが重要。
来談者
中心療法
来談者の潜在能力を信頼し、治療者の人間性が大切だとする療法。 ロジャーズ 来談者は個々に個性が違うので、定式化した精神分祈では治せないし指示態度を取る行働療法も効果がない。
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