司法分野の心理職の仕事内容

 司法分野の心理職の仕事は、非行や犯罪を犯した少年などに、面接、観察、保護、検査などの支援を通して更生につなげ、社会復帰させることを目的とした職業です。

社会から逸脱した違法行為を起こす非行少年などの問題行動を是正し更生につなげるために、 その行動の背景にある心理状態、家族関係、生活状況、周辺環境などに問題がないかを見極め、今後どう対処するかを考えます。

未成年者の非行・犯罪は、今も発生し続けており、凶悪な犯罪も起こっているため、対応する心理カウンセラーはカウンセリングに加えて犯罪心理学に関する知識も理解しておくことが必要です。

また、犯罪者や非行少年の更生にばかり目がいきがちですが、犯罪被害者へのサポートや心のケアに関してもしっかりと対処することを忘れてはなりません。

社会的にも犯罪被害者への支援がクローズアップされ、犯罪被害者相談窓口が設置され警察職員が対応したり、民間のボランティア・組織・団体などでも被害者の各種悩みや相談に応じる活動も行われていますが、重い犯罪被害に遭った被害者に十分対応できる能力を持った相談員や心理カウンセラーは少ないのが現状です。

司法分野における心理職の種類

 司法分野の主な職種は、少年鑑別所・少年院・刑務所の心理技官・法務教官、保護観察所の保護観察官などがあります。

職務は所属する組織により異なりますが、少年院や刑務所を中心として勤務し、非行少年が出所してから更生に繋がるようなサポート支援も行うため、カウンセリングに関するスキルや知識は必らず必要になります。

心理技官・法務教官・保護観察官などの職種は法務省管轄の公務員になるので、職に就くためには公務員試験を受験し合格することが必要になりますが、安定した収入や生活を得ることが出来ます。

法務教官・法務技官

 法務教官・法務技官は、主に少年院、少年鑑別所、婦人補導院、刑務所、少年刑務所・拘置所などの矯正施設に従事し入所者が更生できるよう指導や教育を行う国家公務員の法務省職員になります。

教官や技官の前には所属する省庁の名称が付き、教える立場にある者を教官といい、専門的な知識や資格を持っている者を技官と言います。

少年鑑別所心理技官(鑑別技官)

 非行を犯した少年の処分は、家庭裁判所での審判を経てから決められるのが、成人になってから犯罪を犯した場合と異なる点です。

なので、まず少年の資質や状況を確認する必要があるため、少年鑑別所で調査を行います。

心理技官は心理学の専門知識や技能を有する専門家で、主に次のような業務を行い、研究者として矯正教育や犯罪心理学を探求する心理職のプロとしての役割も担っています。

  • 非行少年の資質の鑑別。(少年鑑別所)
  • 一般住民からの相談に応じる。(少年鑑別所)
  • 受刑者の調査を実施する。(刑務所)
  • 面接や心理療法を活用し矯正教育を行う。

犯罪や非行の再犯を防ぐための矯正教育という観点でカウンセリングを行うため、カウンセリングの基本的技能にプラスして応用的スキルを身に付けていることが求められます。

仕事をしながら心理テストや心理療法などの研修を受ける機会が多いのも、心理技官(官職名:法務技官)の特徴です。

保護観察所の保護観察官

 保護観察官は社会内処遇のプロで、犯罪者や非行少年が出所した後、一般社会で日常生活を送りながら、スムーズに社会復帰できるよう生活指導を担当します。

家庭裁判所調査官

 家庭裁判所調査官は家庭裁判所に従事し、少年の非行・犯罪に関する事件調査を行いますが、少年に関わる周辺環境を重視している点が大きな特徴です。

家庭裁判所調査官は介護職で例えるとソーシャルワーカーのような立場にあり、カウンセラーの立場になる心理技官とは少し役割が異なります。

科学捜査研究所研究員

 警察組織に属する科学警察研究所の研究員は、心理学の専門知識や技能を活用し、犯罪解明や捜査に協力する仕事で、国家公務員第1種試験に合格することが必要になります。

少年犯罪・非行における矯正施設の例

  1. 少年犯罪・非行の発生。
  2. 警察が取り締まり対応。
  3. 家庭裁判所が処分決定。
  4. 警察から少年鑑別所へ送致。
  5. 少年鑑別所の心理技官による鑑別を実施後、家庭裁判所へ鑑別結果を報告。
  6. 家庭裁判所の家庭裁判所調査官による事件調査後、少年審判の決定。
  7. 少年鑑別所から少年院への送致。
  8. 少年院の法務教官による矯正教育の実施。
  9. 少年院から仮退院。
  10. 保護観察所の保護観察官より指導と監督を受けながら社会復帰を果たす。

司法分野の心理職になるには公務員試験の受験が必要

 司法分野の現場に勤務する心理職員は公務員になるので、各施設を管轄する省庁に採用され職員となる必要があり、採用されれば配属された職場で研修や訓練を受けることになります。

司法分野の主な心理職の試験には次のようなものがあります。

  • 国家公務員総合職試験(人間科学区分)
  • 地方公務員上級試験(心理職区分)
  • 法務省専門職員試験(人間科学)

この中でも2012年よりスタートした法務省専門職員試験は、仕事に人間科学に関する知識を活かして職務を行う職員を募集している試験になり、法務教官、保護観察官、矯正心理専門職の3区分があります。

それぞれの職種求人には、性別・年齢の採用条件を設けた新卒採用があったり、中には社会人の採用募集を行っている場合もあるので、興味のある方はこまめに法務省の公式ページを確認することをお勧めします。

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